衝撃的な内容の漫画でファンを驚かせ続けている漫画家・藤本タツキ先生。
代表作には『チェンソーマン』や『ルックバック』などがありますが、ほかの作品もインパクトがある展開が待ち受けているものばかりです。
この記事では、読み切り作品『さよなら絵梨』のネタバレ・考察をまとめました。
『天才』と言われる藤本タツキ先生が描く作品の『独特な世界観』を感じたい人は、ぜひチェックしてみてください。
『さよなら絵梨』は、2022年4月11日にスマホアプリ『少年ジャンプ+』で公開された読み切り作品です。
読み切り漫画といえば、一般的に30〜60ページほどのものが多いですが、同作はなんと200ページ超え。コミック1冊分ものボリュームがある物語となっています。
また、作者は漫画『チェンソーマン』や『ルックバック』で話題沸騰の藤本タツキ先生です。独特な世界観が描かれていて、公開直後からまたたく間に話題に。
『さよなら絵梨』の登場人物を紹介
- 伊藤優太(いとう ゆうた)
- 絵梨(えり)
- 優太の父親
伊藤優太(いとう ゆうた)
©︎藤本タツキ『さよなら絵梨』より
余命が残り少ない母から贈られた誕生日プレゼントのスマホで、家族のありのままの様子を撮影するうちに、映画作りに魅せられていった。
文化祭で自主制作映画『デッドエクスプローションマザー』を発表して、学校中から酷評を受ける。
ドキュメンタリーと皮肉が入り混じる独特な世界観を映像に反映させたが、称賛の言葉をくれたのは絵梨だけだった。
絵梨(えり)
©︎藤本タツキ『さよなら絵梨』より
廃墟に映写機を持ち込んで、映画鑑賞をすることが趣味。
優太が作った映画に感動したが、周囲には誰も共感してくれる人物がいなくて悔しさのあまり、優太と一緒に映画作りのリベンジを誓った。
しかし、本当の目的は『自分の思い出』を優太に残してもらうことだった。
優太の父親
©︎藤本タツキ『さよなら絵梨』より
大学卒業後は友人と一緒に演技の道に進んだが、売れずに挫折している。
妻が生前、優太にきつく当たっていることを知っていたが止められなかったことを後悔している。
『さよなら絵梨』のネタバレを紹介
12歳の誕生日に両親からスマホをプレゼントしてもらった少年・優太。
優太の母は当時、余命残りわずかという重い病気を患っていて、自分が死んだ後も母を思い出してほしいという気持ちから、優太に家族3人で過ごせる残りの時間を動画に収めてほしいとお願いします。
優太は母の言葉を受け止め、スマホを手にしたその日から欠かさず、家族や風景を動画で撮り続けました。
自宅で快活に過ごす母の姿や、家族に見つからないように密かに泣く父の後ろ姿、入院した母の様子など、動画のデータは100時間を超えるほど膨大に。
いよいよ母が危篤状態になり、父と急いで病院に向かった日の様子も動画で撮影していた優太でしたが、病院に着いた途端に逃げ出します。
カメラワークは逃げ出す優太の足元から、病院を背にしてこちらに向かってくる優太の姿を映し、最後は背後の病院が爆発。優太が「さよなら母さァーん!!」というセリフを口にすると、病院は激しい爆発の炎に包まれて動画は終了しました。
優太が編集した動画は、ドキュメンタリー映画『デッドエクスプローションマザー』という作品として高校の文化祭で発表したものです。
体育館で映画を鑑賞した生徒たちは唖然。内容を酷評する声が多く、優太は担任の先生からこっぴどく怒られる始末に。
私は絵梨
映画の内容や、優太の倫理観に苦言を呈する生徒たちの様子でさえも動画に収めた優太は、母が息を引き取った病院で自殺を決意。自分を馬鹿にした生徒たちに対する恨み言や、父親への遺言を動画に残して、病院の屋上に向かいます。
屋上から地上を見下ろす優太。そこへ偶然居合わせた、同じ学校に通っている女子生徒が声を掛けてきて、優太は彼女に手を引かれながら寂れた廃墟に連れて行かれるのでした。
名前も知らない女子生徒に、廃墟で9時間以上映画を見せられた優太は、とりあえず彼女の姿を動画で撮影しながら会話を試みます。
彼女は優太の映画『デッドエクスプローションマザー』に称賛の感想を述べながら、作品としての拙さや荒削りな部分を指摘。
泣くほど心を動かされたという彼女は、優太の映画が周囲から酷評された現状に悔しさをあらわにしました。
そこで、彼女は優太にもう一度文化祭で上映する映画を作るように提案します。今度は誰もが『ブチ泣くような作品』を目指して…。
優太はマネージャーを買って出てくれた彼女の提案に乗り、何度目かの質問を投げかけます。
「結局キミは誰なの?」
「私は絵梨。よろしく」
2人は、翌日から早速来年の文化祭に向けて映画を片っ端から鑑賞するのでした。
映画漬けの日々
映画を作るためのマネージャーになった絵梨は、優太にさまざまな課題を与えます。作品を分析する能力を高めるような課題だったり、平日は学校終わりに、休日は朝から夜まで一緒に映画を見たりして、映画に対する知見を深めました。
時には、お互いが映画を鑑賞している時に無意識で行っているリアクションのクセを指摘し合うなど、距離を縮めていった2人は本格的に映画作りを開始することに。
絵梨は優太に『映画のプロット』を書くように指示します。
何度もプロットを書いては絵梨からダメ出しされる優太。徐々に絵梨からの評価は上がってはいるものの、何が面白いのかが分からなくなってきた優太はプロット作成に降参します。
そして、絵梨に自分が作った映画のどこを評価しているのかを尋ねるのでした。
絵梨の答えは明確です。母親からの残酷な願いが最終的に、爆発という形で幕を閉じてスカッとしたところや、母親をきれいに撮影していたところなどを褒めます。
優太が作中で魅力的なキャラクターだったことにも触れると、「今度の映画も優太の話を見たい」と真剣に話しました。
優太の映画の話
絵梨の一言で『自分』について改めて考える機会が生まれた優太は、これまでに動画で撮影したことを振り返りながら、次回の映画にできそうなネタを絵梨に思いつくまま話します。
映画の序盤は、自分の第一弾の映画が生徒たちに批評されたところから、病院の屋上で自殺をしようとしたところまでを物語として使います。
屋上で吸血鬼の少女と出会い、家に連れて行かれて血を吸われるかと思いきや、映画を多数鑑賞させられて、吸血鬼に映画を作ってほしいと頼まれる優太。
ストーリーはここまでしか思いついていませんでしたが、絵梨は続きをこの場で考えるよう催促します。
優太は、主人公が母親の死を動画で撮影できずに逃げ出したことを後悔しているのだと設定を後付け。加えて、吸血鬼がもうすぐ寿命を迎えるから、その前に自分を映した映画を作成してほしかったのだと話します。
映画の物語終盤では、撮影中に恋に落ちた2人が吸血鬼の寿命によって別れを余儀なくされ、主人公は『愛する人の死』を撮影できたことで、映画にも人生にも前向きになる…という展開をひらめきました。
しばらく優太の話を聞いていた絵梨は、「面白くなりそう」と微笑みます。
思い出の姿
着々と映画に使用する動画データが増えていく優太。余命わずかの吸血鬼を演じる絵梨は、プロット通りに病院に入院します。
しかし、絵梨が入院したのは演技でも何でもなく、本当に持病があったからでした。
お見舞いのシーンを撮影していたつもりの優太は真実を聞かされて、絵梨の『本当の望み』を拒み、そのまま不登校に。
優太の様子を見かねた父は、本当は優太が撮影するはずだった『母の最期の映像』を優太に見せて、母が優太に動画を撮らせたかった本当の理由を告白します。
優太の母はかつて、テレビ局でプロデューサーとして活躍していました。自分の闘病生活でドキュメンタリー番組を制作するために、優太に動画を撮らせたかったのです。
父は優太に、絵梨が自分の姿を映像に残した時、他人がどのように思い出すのかを優太に決めてほしかったのでは…と語りかけます。
さよなら絵梨
絵梨と初めて出会った日に連れて行かれた廃墟に、足を運んだ優太は居合わせた絵梨と再会。一時退院した絵梨と撮影を再開します。
デートの様子や絵梨が入院している時の姿、吊るされた点滴だけを映して、映画の編集について話し合う2人の会話がスクリーンに流れて、ラストシーンでは痩せ細った絵梨が「みんなをブチ泣かして」と話したところで映画は幕を閉じました。
文化祭は絵梨が望んだ通り、映画を観た生徒たちが涙に包まれ、優太は密かにピースサインを膝の上で構えます。
文化祭で映画を発表して好評を得た優太でしたが、映画に『何かが足りない』と感じて、その後は不登校に。何年も何十年も飽きるほど絵梨の映画を見返しては編集を重ねますが、いまだに未完成のままです。
ファンタジーをひとつまみ
ある日、家族を乗せた車を運転していた優太は事故に遭います。自分以外の家族を全員失い、生きる目標をなくした優太は絵梨と出会った廃墟で自殺を決意。
高校時代に絵梨と映画を観ていた『あの場所』で自殺しようとしていると、背後から幼い自分の声と絵梨の声が聞こえてきます。
「この頃よりずいぶん老けたね」
優太が振り返ると、ソファで『さよなら絵梨』を観ていた絵梨は、当時と全く姿が変わらない少女のままでした。
状況が飲み込めず混乱している優太に、絵梨は「映画にファンタジー要素が足りない」とコメント。
優太は絵梨を吸血鬼役にすることでファンタジー要素を物語に追加したつもりでしたが、絵梨は『本当に吸血鬼』だったため、結果的に物足りない映画になったことが明らかになります。
絵梨は何度死んでも蘇る吸血鬼で、これまでに自分が残した手紙をもとに、繰り返し同じ生き方をしていたのです。
孤独な生き方をしなければならない絵梨の身を案じる優太に対し、絵梨は「この映画を観れば何度も優太に会えて、何度でも思い出せる」と話します。
お互いに「さよなら」と別れを告げて、廃墟を後にした優太。
もう『さよなら絵梨』を編集する必要はなくなりました。
なぜなら、『何が足りないのか』がわかったからです。
歩き出した優太の背後にあった廃墟は大爆発。
映画『さよなら絵梨』がようやく完成した瞬間でもありました。
『さよなら絵梨』のストーリーを考察してみた
- 虚構と現実の境界線が曖昧
- 父親の涙の意味
- ラストの爆発シーン
虚構と現実の境界線が曖昧
©︎藤本タツキ『さよなら絵梨』より
基本的に、スマホのカメラ越しに進んでいく物語。自主制作映画『さよなら絵梨』の映像とリンクしながら現実世界での出来事も織り交ぜられているため、何が本当で何が虚構なのか、とても曖昧な描写になっています。
『デッドエクスプローションマザー』で映像化されていた、優太の母が闘病して亡くなったことは事実です。ネタ的な扱い方をしていることで、混乱を招きやすい描写の1つかもしれません。
ほかにも、絵梨をよく知る友人は、絵梨が本当は普段メガネをかけていて、歯の矯正をしていたことを知っていましたが、映画の中の絵梨はどちらも外していました。
そもそも優太と絵梨の出会いのシーンから、映画のために作られた虚構だったことが予想されます。
父親の涙の意味
©︎藤本タツキ『さよなら絵梨』より
優太は、何度も父が泣いている後ろ姿を撮影しています。
余命わずかな妻の身を案じて泣いていただけでなく、優太にきつく当たる妻の行動を止められないでいた自分自身の不甲斐なさにも涙を流していたのかもしれません。
ラストの爆発シーン
©︎藤本タツキ『さよなら絵梨』より
自主制作映画『さよなら絵梨』には、何かが足りないと長年感じていた優太。絵梨を吸血鬼役にすることで、物語にファンタジー要素を加えました。
しかし、実際に絵梨は本物の吸血鬼だったことが判明。最終的に『爆発』という非現実的な演出を盛り込むことでファンタジー要素を補い、『さよなら絵梨』を完成させます。
爆発の演出は、優太がスマホで撮影している様子が描かれていないため、『優太の頭の中』で付け加えられたものの可能性が高いです。
『さよなら絵梨』が読めるおすすめのアプリはコレ!
2022年10月31日現在、漫画『さよなら絵梨』がお得に読めるスマホアプリはこちらです。
- 『ebookjapan』
- 『少年ジャンプ+』
①ebookjapan
『さよなら絵梨』は課金をしなければ読めません。
しかし、クーポン利用やセールなどで、通常料金よりも格安で購入できます。価格はクーポン利用で、最大50%OFFの税込み229円です!
1度購入しておけば、優太と絵梨が作り上げたかった映画の内容をいつでも読み返せるので、手軽に物語を振り返りたい人は、ebookjapanをスマホにインストールしましょう。
お得なキャンペーンが頻繁に行われているebookjapanで漫画を購入すれば、浮いたお金でさらに別の漫画が購入できるようになりますよ。
詳しくは、こちらの記事で使い方をチェックしてみてくださいね。
②少年ジャンプ+
『ジャンプ+』でも、『さよなら絵梨』は課金をしなければ読めません。必要なコインは460コインとなっています。
課金コインの購入にはさまざまなプランがあり、コインの量が多いほど『おまけのコイン』が付与されてお得です。
『さよなら絵梨』は2、3回裏切られる展開がある読み切り漫画
漫画家・藤本タツキ先生の読み切り作品『さよなら絵梨』のネタバレ・考察をご紹介しました。
藤本タツキ先生が描く漫画には、共通して二転三転、予想を裏切られる展開が待ち受けています。心の準備をしたつもりでも、鳥肌が立つような展開が描かれているので、何度も読み返したくなりますよ。
長編作品だけでなく、読み切り作品の読み応えも大きいため、まだ読んだことがない人はぜひ、この機会に電子書籍アプリなどを利用してチェックしてみましょう。